astamuse01

世界80か国から新事業や新技術、新製品、投資情報のデータを収集し、分析するアスタミューゼ株式会社。

データの収集や分析には膨大なコストがかかる。このコストを費やして得た分析データを活用して同社が取り組むのは、企業の新規事業開発や技術活用コンサルティング、研究者や専門職など先端領域の人材採用支援・キャリア支援サービス、知的情報Webプラットホームサービスだ。

企業が新規事業の立ち上げやR&D計画を作成する際、M&Aや提携先を模索する際にはアスタミューゼがデータ分析による数的根拠に基づく企画立案を支援する。

先端領域の人材コンサルティングサービスでは、転職希望者の今後の可能性について、10年先の視野に立って幅広い業種へのマッチングの可能性を示していく。事業を新規設立したり拡大したい企業には、専門人材獲得の指針をアドバイスする。

知的情報Webプラットホームサービスでは、得たデータの一部を無料公開することで、オープンイノベーションのきっかけをつくり、その領域の技術革新をサポートしていく。

一見、データを活用したスマートな事業内容に見えるが「分析だけの企業だとは思ってほしくはない」と事業開発部部長の嶋崎真太郎氏は語る。その詳細について同部ディレクターの河崎宏郁氏と共に説明してもらった。

アスタミューゼのサービスを支えるのはデータ分析と社員の好奇心

アスタミューゼが現在提供しているサービスの説得性を担保するのはアスタミューゼが独自に収集する膨大なデータだ。

収集しているデータは世界80か国のベンチャー企業に投資される資金の流れ、クラウドファンディングの動向、研究機関の研究テーマ、知財・特許情報だ。

収集されたデータはデータベース化され、社内のテクノロジーインテリジェンス部が高度な分析を行い、アスタミューゼが定義した2025年の有望成長領域である「資源・空間・製品」「エネルギー」「医療・健康」「モビリティ」「航空宇宙・海洋開発」「食糧・水・土壌・資源」「農業・食品工業」「都市・空間・材料」「ネット・サービス」「情報通信」「生活文化の拡張」「エレクトロニクス」をはじめ、200の領域に紐づけられ分類されていく。

astamuse02

新規事業開発を例にとっていえば、このデータを用いることで、企業の新規事業やR&D、オープン・クローズ戦略策定の際に根拠を明確化することが可能になると河崎氏は語る。

astamuse03

「企業が事業を立ち上げる際や、事業展開をM&A含めて計画する際、企業の現在の立ち位置を整理することが欠かせません。既存の市場データを分析し、これから創造する事業と比較しながら、競争力の高い内容にする必要があります。企業の経営企画部は中長期の経営計画を作成しますが、そこに裏付けとなる情報があれば関係者の合意もとりやすくなります。アスタミューゼによる支援は、企業の意思決定の根拠となるのです」

提携やM&Aの場面においては、自社に不足している分野は何か、どういった企業や研究機関と協力関係を築けばよいかを提示し、技術を定量的に評価することもできる。

「例えば、ある企業が衝突・追突の技術を得たいと思った際には、世界でその技術を有する百数社をリストアップすることもできます。一般的には自動車会社等が持つ技術ですが、広くデータを収集していると、ドローンの会社などもリストアップされてくる。さらには、その会社への投資額やその企業が持つ技術の価値なども把握することができます」と河崎氏。

企業にとっては、データや数値の裏付けには説得力があり、事業を推進する力になる。膨大なデータはコンサルティングの大きな武器となるだろう。しかし、河崎氏はアスタミューゼのサービスを「データを分析するサービスとは異なる」と話す。

「アスタミューゼのコンサルティングサービスの肝は、事業化を実現するところまで支援する点です。一般的には、コンサルティングは意思決定までの支援ですが、アスタミューゼでは顧客の進捗状況を見ながら、こちらでプロトタイプを作ったり、販路を紹介したり、協力会社との商談をセッティングしたりもしています。新規事業が立ち上がるまで、クライアントと並走する点がアスタミューゼの武器ではないかと思っています」

膨大なデータは資金・システム・人の力で集め、分析した結果

アスタミューゼは、収集したデータのうち、特許・知財情報やビジネスに関するデータを「astamuse.com」で無料提供している。なぜ収集したデータを無料で公開するのだろうか。

嶋崎氏はその点について社是である「知の流通」「知の活用」「知の民主化」の実現を通じて社会の発展と人々の幸福に貢献するためと話す。

astamuse05

「これから新しい事業を創設しようとしている企業にはファクトに基づいた情報を提供することで納得感を、イノベーションを起こす研究者には無料で情報を提供することでオープンイノベーションを起こすきっかけを提供していきたいと思っています」

データは購入できるものは世界中から購入し、インターネット上で閲覧できるプレスリリース等はクローラーを活用して入手する。それでも漏れ落ちるものは人力で入手する。

またアスタミューゼは世界中の500名ほどの理系の専門学歴・職歴を持つ外部パートナーと契約をしており、各専門分野の情報を定量的・定性的に分析・評価しているという。

「ベンチャー企業に投資される資金の流れ、クラウドファンディングの動向、研究機関の研究テーマ、知財・特許情報をすべて保有し、自社で関連付けを行ったデータベース化をしているは、アスタミューゼだけだと自信をもって言えますね」と嶋崎氏。

同社のデータ連携の一例として分かりやすいのが、特許情報と特許拒絶履歴情報の連携だ。同様の特許が複数出願された場合は、先の出願者のものとなる。その場合、後の出願者の特許申請は拒絶されるが、特許権者には他の者が申請・拒絶したことは通知されることはない。

「拒絶情報からは、その技術をどんな業種の企業が何にその技術を活用しようとしていたかが分かります。例えば、飲料会社が茶のフィルターに活用しようとして申請した特許が、車のフィルターの特許により拒絶されていることもあるのです。このように拒絶情報を頼れば、世の中でその技術がどれほど価値あるものか知ることもできます」と嶋崎氏は語る。

アスタミューゼのサービスは人の汗と膨大なデータの組み合わせで創り上げられた、新しい「未来予測」ともいえるだろう。

一方、途方もない量のデータを使いこなすには各専門分野をよく理解する人材も必要だ。

後編ではこれらのサービスを使い、クライアントに価値を提供するアスタミューゼの人材の「資質」についてお話を伺っていく。

  • この記事をはてなブックマークに追加

関連記事