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増え続ける医療費。ますます増加するであろう高齢者人口。このままでは医療費の負担が今以上に重くのしかかってくることは目に見えている。

誰もが健康保険に必ず加入する「国民皆保険制度」と、患者が町のクリニックから大学病院まで原則、自由にかかれる「フリーアクセス」は日本を長寿大国に押し上げた。しかし、今これが医療費を増やす原因にもなっている。

メドケア株式会社はこの課題に、従来にない医療サービスで立ち向かおうとしている。同社が健保組合を対象に提供するサービス「MEDICALLY(メディカリー)」とはどのような仕組みなのか、このサービスで医療業界にどのようなインパクトを与えようとしているのか、代表の明石英之氏に聞いた。

4つの疾病に特化した、遠隔診療サービス

「MEDICALLY(メディカリー)」は糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症の4種類の慢性疾患に特化した遠隔診療サービスだ。想定ユーザーは企業で働く“生活習慣病予備軍”。ユーザーは業務の隙間をぬって通院することなく、専用アプリ内のビデオ通話やチャットの機能を使い、食事指導や診療をスマートフォンで手軽に受けられる。

患者は初診のみ提携クリニックへ足を運ぶ必要があるが、二回目以降はビデオ通話による再診が可能。管理栄養士による食事指導もビデオ通話やチャットで受けられる。血液検査は自宅に郵送されてくるキットで行い、処方薬は郵送で届く。支払いも、もちろんオンライン。

通院の手間が省ける非常に便利なサービスだ。

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ほかの疾患にも拡大されれば非常に便利だろうと思うが、4つの疾患に領域をしぼったのには理由があるという。

「遠隔診療は対面診療に比べ、提供できる医療行為が制限される。安全に提供するため、比較的、軽症の方を対象とした。また、あらゆる疾病に対応するためにはさまざまな設備が必要となる。対象とする疾病領域を戦略的に狭めることで、サービスを合理化でき、コストが大幅に下げられる」

ホスピタリティを売りにした“プラス”の医療サービスだけでなく、これからは無駄を削ぎ落としたミニマムな医療サービスを求める人もいるのではないかと語る。

ウェアラブルデバイスを活用し、医療の無駄を削ぎ落とす

メディカリーは健康保険組合に向けたサービスだ。いわゆる自由診療のサービスが中心となるが、利用料は保険医療と同様に、健康保険組合がその7割相当額を支払う。ここがこのサービスのユニークな点だ。

利用のメリットは医療費の削減と予防の推進。病名が外れるまでの治療のみにフォーカスする病院とは異なり、メディカリーは症状が改善し、“患者”ではなくなった後の健康維持、将来の予防まで個人の健康をトータルでサポートする。

仕組みはこうだ。サービスを導入すると、メディカリーは健康保険組合から組合員の検診データやレセプトデータの提供を受け、現在の状況から最低限行うべき治療内容を見立てて、組合員ごとにかかる医療費を計算する。現在の健康状態から、想定されるコストを予測できるのは、スタッフに医師も抱える同社ならでは。独自に設定した計算式で算出したミニマルコストを元に初期の医療費を設定する。その後、健康状態の改善状況に応じて、次月以降医療費を決めていく。

組合員である患者は提携クリニックへ行くと初診時にウェアラブルデバイスを貸与される。ここから歩数や活動量などの健康状態を観察できるので、改善効果が見られた人に対しては、それに応じて医療費の水準を下げることができるのだ。こうすれば、患者は医療費を下げるために熱心に治療に取り組む。結果的に、健康保険組合の支払う医療費も下がる。

現在の保険医療では、診療行為ごとに決められた報酬点数が合算され、その診療報酬点数が多いほど、病院に入る金額が高くなる構造になっている。提携クリニックで行われる治療は自由診療。行われた診療行為に対してではなく、改善効果に応じて金額が決まるため、効果的な治療へのモチベーションも上がる。

「現状では、コストの決定に関わる医師、本質的な支払い者ではない患者ともにコストにシビアになりにくい。病院は軽症な人にも病名をつけがち、患者は“とりあえず”で受診しがちだ。インセンティブが症状改善や予防に努める方向とは逆に働いてしまっている。コストとサービスの合理化を図るため、点数稼ぎに陥らない仕組みをつくりたかった」

効率的な治療によって削減できた医療費は、予防医療にかかる費用に回す。健康保険組合は従来なら治療中の組合員にかけていたコストを、健康な組合員の生活習慣病予防に振り向けられるようになる。

メディカリーは単なる遠隔医療ツールではなく、従来の保険医療に変わる合理的な医療システムを提案する、実に大胆なサービスなのだ。

保険とは何か。医師として治療にあたる中で持った課題意識

明石氏が合理的な医療システムを新たに提案しようとしたのは、現場で保険医療の仕組みの限界を痛感していたからだという。前職は医師。メディカリーが対象とする4つの疾病も含め、さまざまな慢性疾患を持つ高齢者の在宅診療にあたっていた。

「在職中、診療報酬の改定で、それまでは月2回の訪問で介護保険を入れて1人6万円ぐらいだった診療報酬が、1万3千円まで下がった。企業努力でどうにかなるレベルではなく、コスト構造に疑問を持つようになった」

診療の内容も医師の裁量で左右され、どこまでサービスするべきかが曖昧だと明石氏は指摘する。たとえば、生じている合併症の数と医療費の関係を見てみても相関が見られない。同じ症状でもかかる医師によって、医療費がバラつくのだ。

サービスとコストの間に明確な基準がないため、社会問題にもなったタクシー代わりの救急者利用など、患者が望めば過剰な医療が提供できてしまう。無謀な飲酒による急性アルコール中毒や自ら危険な行為を侵した結果の怪我には保険が適用される一方、健康を気づかう人は自分でジム通いなどの費用を負担しているのが現実だ。

「保険は本来、コントロールできないリスクに対して備えるもの。健康な人ほど損をする今の仕組みはおかしい。最低限の治療は等しく受けられるべきだと思うが、昨今の医療費の伸びを考えると現状の制度では限界。自分が引退するまでの今後30年間、現在の医療の仕組みの中で医者をやっていける気がしなかった」と当時の心境をこぼす。

世の中の仕組みが整っていないならば、自分が役に立つサービスをつくろうと、ビジネスへの転向を決意。生活習慣病に特化した、透明度の高い医療サービスの実現を志して、起業した。

「心臓外科医の経験もあるが、生活習慣病の行き着く先がまさに心臓手術。予防から深刻な心疾患まで総合的に診ることができるので、職業的興味もあった。医師として一生で関われる人数はせいぜい数千万人から1万人だが、新しいサービスをつくったら、もっと多くの人に使ってもらい、幸せになってもらえる」

医療と予防医療をワンストップで提供する、革新的なサービスはこうして世に誕生した。

 

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