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多くの企業にとって「最も高価な買い物」になるオフィス移転。「新しい働き方」に注目が集まり、オフィス環境も条件に捉える就業者が増える一方で、各社にとってその施工費や場作りは単なる引っ越し以上に頭の悩ましい問題でもある。
『「ただのオフィス移転」を「会社の成長の好機」に変える』を自社の提供価値と銘打つ不動産ベンチャー企業がある。東京・渋谷を拠点とするヒトカラメディアだ。2013年に設立し、30人弱の社員を抱える。

彼らの主力事業は「オフィス移転の仲介」と言い表せるが、その中身は一風異なる。移転する企業の経営戦略や採用戦略に紐付いたオフィス選定や、組織の課題解決や成長につながる内装プランニングなどの「提案力」に強みを持っている。

また、ヒトカラメディア自身も、東京のほか、長野・軽井沢、徳島・美波町にサテライトオフィスを構え、それぞれで地場ビジネスを手がけ、『「働く場」と「働き方」からいきいきとした組織と個人を増やす』というビジョンを実現すべく動いている。

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今回は、取締役の田久保博樹氏、新規事業部の日比野亮二氏に、目下取り組んでいる新事業「スイッチオフィス」を中心に話を聞いた。

不動産業界が「やりたがらない」からチャンスあり!居抜きオフィス物件を仲介

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2016年2月にローンチした「スイッチオフィス」は、居抜きでのオフィス移転を支援する会員サービス。専用サイト上に居抜きでの移転が可能、または相談できる物件が掲載されており、登録会員はサイトから詳細の閲覧、商談の問い合わせが行える。現在、登録者数は1300人を超えたというが、一般的な賃貸住宅の仲介サイトと異なり、この数値はほぼ1300社と言い換えてもいいだろう。

田久保氏は「居抜きのニーズは確実にある」と話す。最大のメリットはコスト削減だ。入居側は内装構築費を、退去側は原状回復費の負担を大きく減らせる。仮に100坪のオフィスを例に考えると、内装構築費が15万円/坪ならば1500万円、原状回復費は相場の2〜6万円/坪となると200〜600万円の節約となる。

利用者のメリットが大きく、飲食店業界では珍しいものではない「居抜き」だが、ことオフィス仲介となると手がける事業者はまだ少ない。その理由は不動産業界の収益構造からすると「割に合わない」仕事とみなされがちだからだ。

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(左から)日比野亮二氏、田久保博樹氏


多くの不動産業者は、顧客が物件契約を結んだ際に「仲介手数料」を得るモデルのため、契約までの時間をいかに短縮するかが営業課題となる。しかし、まっさらな物件にいち企業を紹介するのに比べ、居抜き移転となると入居側、退去側、物件オーナーと調整相手が増え、契約までに手間がかかる。

問題に上がりやすいのは残置物の取り扱いだ。たとえば、「退去側がDIYで作った本棚や机が破損し、入居側の社員が怪我をした場合はどちらに責任が及ぶのか」など、考慮すべき問題が増える。日比野氏によれば「通常のオフィス仲介に比べ、負荷は2倍、3倍とかかる」が、売上となる仲介手数料が増えるわけではない。不動産業者からすれば、居抜き以外の案件をこなすほうが売上は伸びやすく、敬遠されがちな理由となっている。

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さらに、一般的にオフィス退去は6ヶ月前ほどの申告が慣例となっており、「居抜き可能物件」として紹介されること自体が、退去する企業にとってはコンプライアンスに触れる高い経営情報になりかねないことも、この事業の難しさを増す一因となる。

しかし、ヒトカラメディアはこの分野への挑戦を決めた。見据えるのは3年後の「当たり前」だ。

3年後には不動産業界に変革 「三方良し」の居抜きオフィスを標準に


田久保氏は挑戦の経緯を「参入を決めたのは市場規模よりもヒトカラメディアにとってバリューの出しどころのひとつになり、確実に押さえたかったから。居抜きは壊して建てるよりもずっとエコな方法で、現在の時流にも合っている。3年後、4年後には居抜き移転が当たり前になっている世界観を見据えながら、そのタイミングが来た際のノウハウを持っておきたかった思いもある」と話す。

また、ヒトカラメディアが抱える顧客に、スタートアップやベンチャー企業が多いことも後押しになった。それらの企業は人員や事業の拡大により、多くは1年半から2年ほどのペースで移転を繰り返す。使える費用が限られる中で、内装構築費や原状回復費を削減しながらもオフィス環境を整えやすい居抜きのメリットはより大きく働く。

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現在のヒトカラメディア東京オフィスも居抜き移転だ。以前にもベンチャー企業が入居していた。もともとあった仕切り壁を壊し、開けたミーティングスペースに変えるなどの手を入れている。


「少しでもオフィスを自分たちの色にしたい、使い勝手をよくしたいという気持ちがあっても、すべてをゼロからつくる必要はない。居抜き移転は、今あるものにアイデアを加えて再生させ、より自分たちらしい空間をつくりながらも、費用を抑えられる手段」と田久保氏。

また、首尾よく居抜きでの移転が済めば、物件オーナーにとっても入居の空白期間が短くなり、賃料が継続的に見込めるメリットがある。あるいは、立地の分が悪い物件であっても、初期費用を押さえられるメリットを武器にした宣伝を打てる。

入居側、退去側、物件オーナーの「三方良し」を叶える方法だからこそ、ヒトカラメディアは事業を通じてその価値をより世の中に問うていく姿勢を表している。

記事後編では、ヒトカラメディアが現在欲しい人材にフォーカスを当て、うかがっていく。

文・撮影:長谷川賢人

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