OLYMPUS DIGITAL CAMERA

多くの人の夢や憧れの的であり、ステイタスシンボルでもあった一流ブランドのハンドバッグや財布。その隆盛を影から支えてきたのが国内OEMメーカーだ。海外のブランドロゴのついた皮革製品の多くは日本で企画され、生産管理が行われている。

レディースの財布を得意とする野村製作所はそうしたOEMメーカーのひとつ。大手ブランドから信頼され、長年の実績を積み上げてきた。

同社では今、多様な人材を受け入れて新たな可能性を探っているという。現在、どんな状況におかれているのか、そして、これからどんなことをしようとしているのか、同社代表の野村氏、サンプル室に所属し販売担当も兼任する籾山氏に聞いた。

ポスト・ブランド時代がやってきた

高級ブランドを支えてきた国内OEMメーカーが危機に瀕している。
レディース向けの財布を得意とするメーカー、野村製作所代表の野村氏は次のように語る。

「今年は注文が軒並み減った。2020年東京オリンピックでこれから需要が伸びると業界でも期待が高まっていたが、予想が裏切られた。バッグなどに比べて財布は景気に左右されにくい商売だったが、今年は財布も止まった。これまで20〜30年、財布が動かなくなったことはない。かなりの異常事態だ」

注文数量が減っているうえ、ブランドが求める出し値も従来の常識では考えられないほど下がっている。まさかあの会社がと思われた財布メーカーも倒産した。

皆が同じものに憧れる時代ではない。ブランドが今、求めているのは小ロット生産だ。値下げ圧力のかかるなか、手間のかかる小ロット生産を続けていけば、いずれは無理がくる。粛々とブランドの注文をこなしているだけでは将来がない。100年、200年つづく息の長いメーカーでも、やり方を変えなければ安泰ではないという強い危機感があるという。

販路開拓に職人の育成。長い目で業界を支える

減っていく注文を業界内で奪い合うのではなく、協力して活路を開いていくことはできないか。野村製作所は早くから業界の活性化にも率先して取り組んできた。

その試みのひとつが「日本革市」と呼ばれるPR事業だ。共同で百貨店の催事売り場へ出展し、革の魅力を伝える展示即売会で、同社が業界団体に持ちかけ、2012年にスタートした。開催実績は今年で50回を越える。これまでOEM生産を中心にしてきたメーカーにとって、ブランド不振の現在、つくったものを直接エンドユーザーに販売できるルートは頼みの綱だ。

販売員として店頭に立つこともある籾山氏によると「昔ながらのつくりが百貨店の客層に受ける」という。小銭入れのないシンプルな財布やファスナーがついていない財布などは「こういう財布を探していた」と喜ばれることも多いそうだ。

業界では高齢化による離職も進んでいる。

OEMメーカーは通常、クライアントと打ち合わせてサンプルを試作、仕様を決めた後の量産は提携の職人や工場に外注する。実際に、手を動かす職人は80歳現役も珍しくない。最近では若い世代も増えているが、ミドルエイジの層が極端に薄いため、視力の衰えなどで彼らが引退してしまえば、担い手は急激に減る。野村製作所では栃木に工場をつくり、職人の育成も始めた。

業界団体が主催する講座に講師を派遣することもある。浮き沈みの激しいバッグ専門だった職人に財布の技術を身につけてキャリアを続けてもらう狙いだ。


▲事務所に併設されたサンプル室。ここで、商品の仕様を決める。

 

時代に適応するための、いい意味での「適当」

販路開拓や職人の育成に加え、今までの考えかたでは立ち行かないのではないかと、積極的に若手の採用にも取り組んできた。モノづくりに魅力を感じる人など、多くの若者が野村製作所の門を叩くが、残るのは一握りだ。


▲サンプル人数分のミシンが用意されている。自分用に使いやすい設定になっているマイミシンを踏む。

「今、残ってくれている人達はうちに合っているんだと思う。能力もあり、自分から積極的に仕事に取り組んでくれている。自分たちには思いつかないようなアイディアもたくさん持っていると思うが、謙虚なのか、あまり表に出さない人が多い。それを如何にひき出すかが今の自分の課題だ」という。

社風は「日々適当」と茶目っ気たっぷりに話す野村氏。真意を問うと、

「過去に付き合いのあったお客さんや大きい同業者さん達から周年記念の本がここにはある。こうやって『会社はこうあるべきだ』と掲げてきた会社はみんなつぶれた。もう、我が社はこうだと言って通す時代ではない」

業界の慣習や過去の実績にはとらわれない。かといって、将来に向けたあるべき論もふりかざさない。このしなやかさが不安定な時代を生き抜いていくのには必要なのかもしれない。

野村製作所への転職に興味がある方、キャリア相談したい方は、こちらからご応募ください。(エムアウトグループ株式会社エムアウトキャリのサイトに遷移します。)

  • この記事をはてなブックマークに追加

関連記事