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医療×ITの進化が止まらない。東大発の医療ベンチャーMRT株式会社は2016年、スマートフォンを利用した日本初の遠隔診療・健康相談サービス「ポケットドクター」の提供を開始した。特徴は、対面診療さながらのビデオ通話を実現する高度な技術や医師目線のサービス設計。次世代のヘルスケア産業を担うサービスとして国も注目している。前編では「ポケットドクター」のサービスを中心に、後編では主に同社の組織や求める人材像について、MRT株式会社メディカルヘルスケア本部メディカルコンサルティンググループ部部長落合宏明氏に聞いた。

スマホで予約、ビデオ通話で診察。病院に行かないヘルスケアサービス

2015年8月に厚生労働省から事務連絡が出され、遠隔診療に対する規制が緩和された。以降、遠隔診療に対する注目が高まっている。多様なツール・サービスが登場し、医療施設側も遠隔診療ツールを探している状況だ。

ポケットドクターは「遠隔診療」と「健康相談」の2つのサービスから成るが、「遠隔診療」の方はこの時代の流れに乗り、特に利用者実績を伸ばしている。現在、ポケットドクターを導入している医療施設は約400、医師は約200名にのぼる。

遠隔診療の仕組みは下図のように、まず、患者がポケットドクターからオンラインで診療(再診)を予約する。予約当日はビデオ通話で診療を受け、診察料をクレジットで支払うと後日、処方箋・院内処方薬が配送されてくる。

mrt03患者が支払うのは医師への診察料のみ。医療施設に対して遠隔診療システムを提供する。

法律上、初診は対面診療でなくてはならないため、医師が初診時にポケットドクターを案内、2回目以降の再診で遠隔診療が行われることになる。

「当社は特許技術を持つオプティム社と提携し、高画質のビデオ通話を実現した。患者の様子や患部の確認ができるだけでなく、直接、画面に書き込みできる機能がある。画面で指示だしできる点は先生方から支持をいただいている」と、メディカルコンサルティンググループ部長の落合氏。

症状の安定した患者への診療や在宅診療などで、とりいれる施設が増えているという。通院の困難な患者にとっても、医師の時間を有効に活用したい医療施設にとっても移動時間や待ち時間が不要になることの意義は大きい。

一方、「健康相談」はアプリを通じて、自由に時間と医師を選んで相談できるサービス。1回ごとに相談料を支払い、医師と通話。医療行為を伴わない範囲で、医師の見解を聞くことができる。「これは病院に行った方がいい症状か」「他の病院で、こんな診断を受けたが、どう思うか」など、話が聞ければ安心できる場面は多い。

スマホを活用して、離れた場所にいる医師と患者をまるで側にいるかのようにつなぐ。これがポケットドクターのサービスだ。

現場主義を徹底、医師目線で医師の課題を解決する

ポケットドクターを提供するMRT株式会社の母体は、医師の互助組織だ。学会などで医師が不在の際の代診医を紹介し合う活動が、医師の紹介事業に発展。現在、年間10万件以上の医師を紹介しており、2017年には累計100万件の紹介実績を突破した。

こうした背景から、同社が提供するサービスには徹底した現場主義が貫かれている。これまでに提供してきたサービスも、医局の業務効率化をサポートするグループウェア「ネット医局®」など、医療現場の課題を解決するものだ。

ポケットドクターも遠隔診療ツールの提供にとどまらず、患者への案内方法など、運用面までサポートする。コンサルティングを担当する社員のなかには医療従事者もおり、病院規模に応じた提案など、現場のニーズをふまえたサービスになっている。

「遠隔診療システムの導入は医療機関のサービス向上に役立つ。院内感染のおそれのある患者が自宅にいながらにして診療を受けられるほか、待ち時間なしで場所も選ばず診療が受けられるため、通院の負担が軽減される。自己判断で通院をやめてしまう患者へ治療の継続も促しやすく、集患にもつながる」

遠隔診療への規制が緩和されるまでは電話再診が一般的だった。音声のみでは医師が得られる情報は限られるが、ビデオ通話なら顔色や患部の様子も細かく確認でき、飛躍的に情報量が増える。ポケットドクターなら、連携するヘルスケア機器からバイタル情報を取得したり、診療時の様子を写真や音声で記録したりすることも可能だ。

記録の残らない電話再診はサービスで行っていた医療施設もあるそうだが、ポケットドクターを使えば診察料ももれなく徴収できる。遠隔診療の質の向上に加え、病院経営にもプラスになるのだ。

ツールの提供でなく文化の創造。最新技術で新しい医療をつくる

高齢化が進み、医療のあり方が見直されてきている。今後、求められるようになるのは、地域包括ケアシステムだ。複数の病気を抱える高齢者が増えていけば、急性期の患者を治療する大病院を中心にした医療よりも、かかりつけ医を中心とした包括的なケアが重要になる。

ポケットドクターは、かかりつけ医を中心とした新たな医療のかたちへの転換を進めるツールにもなる。「遠隔診療」では、ヘルスケア機器で測定したバイタル情報をBluetooth通信で飛ばし、医師側からも血圧や脈拍、血糖値などの数値を見られるようになっている。日頃からこれをモニターしていれば、何かあった時に医師から患者へ来院を促すことも将来的には可能だ。

「具合が悪くなったから病院へ」ではなく「悪くなる前に病院へ」。

「我々は日本の医療の文化を本気で変えたいと思っている。バイタル情報の有効活用についても取り組んでおり、ヘルスケア機器との連携も更に拡充していきたい」

将来的には、ポケットドクター上に記録された音声データを自動診療に活用していくことも検討しているという。サービス化は未定だが、ディープラーニングにより、自動で診断できるツールも検討中とのこと。ポケットドクターは今後の医療シーンを大きく変えていきそうだ。

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