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「農業に情熱を」を企業理念に掲げる株式会社農業総合研究所は、2017年12月末現在で、生産者数7,183名と国内スーパーマーケット1,064店を結ぶ独自の『物流×ITプラットフォーム』を運営する。今回は、生産者が主体的にビジネスを行うことで「農業の未来が開ける」と考える代表取締役社長の及川氏に、当社のメイン事業である『農家の直売所』のビジネスモデルについて、その全貌を伺った。

最初の儲けは果物と野菜の現物支給でした

及川氏は大学の卒論テーマに『日本の農業の未来』を選び、そこで知った事は、日本の農業が衰退する未来。「このまま誰も何もしないのか?」と疑問を感じつつ、卒業後はエネルギー専門商社に就職し、6年間を営業職で過ごした。それでも「誰かが農業を変えなければならない」という気持ちが日増しに強くなり、裸一貫、和歌山で農業に身を投じることを決断した。

「まずは農業の現場を見なければならない」という思いから、最初の3年間は農家として生計を立てたが、その中で「一農家が農業全体を変革させることは非常に難しい。流通を変えなければならないのではないか」という仮説を持つようになり、青果店で働くことに。そこで、及川氏は当たり前だが、今まで気づかなかった大きな矛盾に直面する。

「私が農家で働いている時は野菜を1円でも高く売りたかった。でも、青果店で働きだすと、野菜を1円でも安く仕入れたくなった」

生産者と販売者を繋ぐ流通を変えることで、農業全体を改革できるかもしれない。ここで及川氏は、ビジネスのヒントを得たのだ。

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及川氏はまず手持ちの50万円で農業総合研究所を立ち上げた。そして、営業職の経験をいかして、農家の農産物を都心のスーパーマーケットやデパートに販売する営業代行を始めた。直ぐに物は売れ出したが、問題も立ちはだかった。「てっきり営業代行でお金を稼げると思っていましたが、農家の方からいただけたのは、お金ではなく果物でした。コンサルティングのようなサービスは、農家の方にとって、お金を支払う対象としてイメージがしづらかったようです」と、現物支給だった当時を振り返る。そこで及川氏は、和歌山県内や大阪駅前で、農家の方から直接仕入れた果物や野菜の即売を始め、これが『農家の直売所』の原点となった。

「そんなことを続けていたら、だんだんと私の事が噂になったんです。『東京から来たお兄ちゃんに果物や野菜をあげると、それを売ってきてくれるらしい』と。それからは徐々に相談も増えてきたのですが、道の駅や農産物直売所は土日しか売れないし、雨が降ると客は来ない。都心からは車のある人しか来れないという課題があり、それらをひとつひとつ解決していくうちに『農家の直売所』というビジネスモデルが少しずつ形になっていったんです」

販売金額の約65%を生産者に還元し、農家売上を倍にするビジネスモデル

『農家の直売所』は、全国の農家や農産物直売所から集荷場に集めた新鮮な農産物を、都心部にあるスーパーマーケットを中心としたインショップ形式の直売所で委託販売するプラットフォームビジネスである。生産者が販売先や価格などを意思決定でき、集荷場に持ち込んだ農産物が翌日には販売店に並ぶ。生産者に寄り添ったビジネスモデルに特徴があった。

この仕組みは生産者が手にする収益に大きな変化をもたらした。生産者と小売店の間に介在していた中間業者の数を減らすことができたからだ。農業総合研究所の発表によると、既存の流通では、末端販売単価が100円で生産者の手取り金額が30円だったところ、『農家の直売所』では、末端販売単価が95円で生産者の手取り金額が62円と、生産者の手元に残るお金が約倍になった。「販売金額の60%~65%を生産者に、残りを販売店と弊社で分けています」と及川氏は収益構造の一部を明かしてくれた。このビジネスにより『農家の直売所』だけで年間1億円もの売上を1年であげる農家さんもでてきており、農家の明るい未来が垣間見え始めている。

改革には、既存の仕組みを支えてきた団体からの反発も予想された。しかし、農業総合研究所が自前で6、7拠点ほどの集荷場を設けた時に「自分たちだけでは集荷場の拡大のスピードアップを図るのは難しいと考えた」と言う及川氏は、各地元の企業に集荷場の運営、つまりプラットフォーム作りへの参加を打診した。「今では全国に21箇所の直営集荷場と51箇所の提携集荷場の72拠点まで拡大しました。提携先とも良好な関係です」と、業界を巻き込んだ仕組みづくりが、今でも着々と進んでいることが伺える。

生産者がタブレット端末で意思決定

農業総合研究所の提供するサービスは、集荷場による物流だけではなく、ノウハウの詰まった膨大な情報を提供することで、生産者の意思決定も支援する。「農家の方が自分で考え、好きな金額・場所で販売でき、売上がきちんとあがる仕組みをつくることが農業を進歩させる」と及川氏は考えている。

例えば、トマトを作っている山下さんは、その日に販売するスーパーマーケットを選定する。まずは、スマートフォンやタブレット端末を起動させ、農業総合研究所が提供しているポータルサイトにアクセスし、販売店情報を確認。競合情報を参考に意思決定を行う。値段と販売先を決めたら、生産者が自らバーコードを発行して商品に貼り付け、それを集荷場に持っていく。

また、農業総合研究所には、毎日スーパーマーケットのPOSデータから売上情報が届くシステムが構築されており、店舗ごとの売上状況を生産者自身が確認できるようになっている。そのデータを元にして、生産者は翌日の出荷する販売店や商品数を調整する。これらの仕組みが、生産者の主体性を育んでいる。

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こうして農業総合研究所は、物流改革とITプラットフォーム強化によって、独自のビジネスモデルを確立した。最後に及川氏は「蓄積したデータを基に将来を予想できるようにしたい。そうすれは、もっと面白いことができると思うんです」と、ビッグデータを活用した農業の明るい未来を思い描いていた。

次は、農業総合研究所が目指す組織と求める人材像について及川氏から語っていただいた。

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