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小さい頃に将来の夢を聞かれて、「大工さんになりたい」と答える人も多かったのではないだろうか。

大工が活躍する建設業界の市場規模は52兆円。競技場の建設や交通路の整備など、ニュースをにぎわす話題を振りまくことも多いが、道路工事や家の改装といったように、実は私たちのとても身近にあるビジネスでもある。

一方で、その事業規模の裏側では、不透明な請負業務や過剰な下請け構造がひそんでいるが、なかなか改善されていない現状がある。それと共に、職人の能力が十分に評価されているとは言いづらい。 そう話すのは、ユニオンテック株式会社の取締役副社長、韓英志氏だ。

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「日本の職人は世界で活躍するスーパースターになってもいい、と彼は語る。ユニオンテックはこれまでの慣習をテクノロジーによって変えていくことを目論む。

ユニオンテックはもともと内装工事を手がける会社として、クロス職人の創業社長が一代で立ち上げた。現在も従業員120人の内、現場監督、設計、PMなど、建設現場で仕事を行う人たちが過半数を占める。2016年新設の「ネット事業部」は現在20人ほどだが、今後はよりIT化を推し進め、大胆に舵を切る最中にある。

ユニオンテックが提供する建設業界のオンラインプラットフォームが「SUSTINA(サスティナ)」だ。企業検索、求人、イベントサーチなど、建設業に必要なあらゆる情報を集約し、「業界の課題」を包括的に解決する。また、同社は2018年3月14日に、現場作業と職人をマッチングするアプリ『CraftBank(クラフトバンク)』をリリースした。

記事前編では、それらのサービスから特にCraftBankへ絞り、手がけるに至った背景を伺う。

建設業界に漂う「違和感」をITと職人の技術で打破する

CraftBankは、「⼯事を依頼したい⼈」と「腕の良い職⼈」を直接つなぐアプリだ。たとえば、職⼈を必要とする飲⾷店やオフィスのオーナーなどが案件を登録し、職人がエントリーすることで工事の受発注が成立する。あるいは、現場作業で急遽足りなくなった人手を補うという使われ方も想定される。

現在は東京近辺で「完全招待制」で運営しており、技術力に定評がある職人のみ受注できる状態になっているが、徐々にユーザー数や地域を増やしていく見込みだ。いわゆるクラウドソーシングのように能力を提供するのではなく、確かな技術力を持つ職人へのインセンティブとして、作業完了後に当日現金化が可能であったり、下請けに不利にならないような料金設計をベースに、手厚いフォロー体制を敷く。

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このビジネスの着想のきっかけとなったのは、元クロス職人でもあった同社の代表大川が昔から業界に感じていた違和感だったという。そして、それは建設業界の労働環境と紐づいていた。世間で労働生産性の向上の必要性が叫ばれるなか、建設業界は未払い残業や長時間労働が野放しになっている。

「時間をかければ高品質になる」という職人気質には同意する部分もあるが、現場作業以外の工程表づくりや見積もりの管理などのコストが高いままだ。IT化で効率化できるような作業に追われる事業者も多い。また、労働環境においても発注主や元請けが強くなり、幾重にも重なる下請け構造が状態化しているため、職人たちが自らで現状を変えられるという意欲が持ちにくい。その現状は職人を内向きにしていき、「気の知れた身内同士で愚痴をこぼし合うのが日常だ」と韓氏は言う。

この状況をゲームチェンジするために、ユニオンテックはITを活用し、まずは主に中小規模の現場作業を中心に改善していくことを目指している。

世界で戦った韓氏の知見から、建設業界の未来とは

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韓氏はもともと建設業界出身ではない。リクルートホールディングスにて新規事業の立ち上げや投資を多数手がけ、国内外を問わず新規事業開発や事業経営に携わってきた経歴を持つ。2015年にはドイツ・ベルリンで事業経営にあたった経験も持つ。

海外で文字通り「外」を経験した韓氏の目からすると、「日本の職人の技術は、間違いなく世界でも最高水準」だと言い切る。一例では、シリコンバレーのIT長者が
自宅に日本庭園をつくる際に「日本の職人」をわざわざ派遣させたこともあるそうだ。つまり、「職人の技術力」が正当に評価されることは内外に関わらず可能なのである。

「我々のビジネスで建設業界に、野球でいう“落合博満”を生むんです。落合博満は当時では珍しく代理人交渉によって球団と契約をした選手です。自分の実力を正当に評価してもらうための試みでしたが、世間からは大バッシングを受けました。しかし最終的には、日本初の『1億円プレーヤー』になりましたよね。同じように、きちんと実力が評価され、職人の世界でも“1億円プレイヤー”が台頭すれば、今までのイメージを払拭するどころか、腕の良い職人を目指すことは憧れへと変わっていくでしょう」と韓氏は語る。

ITを使うことで、職人の力量を正当に評価してもらう──。壮大なビジョンだけに、実現への課題は山積みだ。ITと土木というイメージに結びつかないものを感じるかもしれないが、「職人さんは普段からスマートフォンを使いこなして、コミュニケーションを取り、休憩中にはゲームで遊んでいる人も少なくない。実はITを利用するまでのハードルはそこまで高くない。むしろIT業界にいた僕よりも上手に使いこなし、IT利用による受発注の『即時性』が職人に恩恵をもたらせる」と続け、問題の深層へと切り込んでいく。

「ひとつの建設現場が成り立つは、発注元から工事を受ける元請がおり、その下に数多の下請けがぶら下がる形になります。その下請けも、自分が知っている範囲の業者に声をかけることが多い。元請けには案件が集まるなかで、知り合いだけでは職人をアサインしきれない現場もあります。一方で、職人は仕事が連続したり、あるいは一週間も休みになることもあったりと収入が不安定になりがちです。そこには情報の非対称性が生まれているんです」

そこで、元請けと職人をアプリ上でマッチングする「リボン図型」のビジネスとして、CraftBankは構想されたのだ。

ユーザー獲得は「紹介のみ」、建設業界のネットワークをハック

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CraftBankは、建設業界の仕事受発注のプラットフォームを構想する。大きく2つの肝となる機能がある。

ひとつは「当日現金化」。CraftBankで仕事を受注すると、職人は最速で作業日当日に、銀行振込かコンビニで売上を受け取ることができる。資金流動性が高いことで、職人は突発的な案件も受けやすくなり、仕事量のコントロールもできる。

もうひとつは、職人側が中間マージンを取られないようにしていることだ。Craftbankでは、職種・作業時間・時間帯を入力すると、それぞれの工種で推奨金額が提示され、下限80%までしか元の値段から下げることができない。つまり、元請けが不当に手数料を間抜くことがないように、職人を「守る」仕組みが出来上がっているのだ。

ただし、現在は「完全招待制」で厳選した職人のみに使ってもらっていると言う。安易にユーザー数を増やす施策を実行するのではなく、知り合いで、腕のある職人のみを囲い込む。アプリのなかで、良質な「コミュニティ」が出来上がるのだ。

同時にそれは、ビジネスの戦略としても有効であると踏んでいる。もともと「知人の紹介」で案件のほとんどが受発注されていた建設業界において、知人・友人のネットワークへの波及効果は大きい。韓氏によると「スリーディグリー(つまり「友人の友人」)までネットワークが広がれば大多数を網羅できる」と見ており、広告費やマーケティングにリソースを割くのではなく、焦らずにプロダクトを磨き込むことができる。

これからはアプリ内で元請けと職人の「効率の良いマッチング」を、定量・定性で見極め、言語化していく。職務とスキルのマッチング精度や、スキルの適切な「評価」をできるようになれば、当初の狙い通り、マーケット価格の適正化が行われるようになるだろう。

しかし、ここでふと疑問がよぎる。発注側と受注側の金額を統一した場合、ユニオンテックが抜けるマージンがなくなってしまうのではないか。筆者が質問をすると、「手数料を高くすることは考えていません。それよりも建設業界の『プラットフォーマー』として職人さんに使っていただけることの方が大事です」と微笑む。

ユニオンテックは、「業界の常識を変革し、再編する社会的存在意義の高いリーディングカンパニーへ」をビジョンとして掲げる。ビジネスとして洗練されたトップ企業を目指すだけではなく、業界の「課題解決」と「発展への寄与」を存在意義とする。CraftBankはプラットフォーマーへの足がかりになりそうだ。

記事後編では、建築業界の課題と、業界内のユニオンテックの立ち位置、そして同社が求める人物像についても話をうかがっていく。

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株式会社エムアウトキャリアはBizna運営している株式会社エムアウトのグループ企業です。

文・奥岡権人/長谷川賢人

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