今年、12月から「白ナンバー」の車を使う事業者に対するアルコール検知義務が発生します。
警察庁は、荷物運搬用「白ナンバー」車を使用する事業者に対し、2023年12月1日からドライバーの飲酒検査を義務化すると発表しました。半導体不足によりアルコール検知器供給が遅れ、開始が延期されていましたが12月1日からの施行が決定。意見公募では24年4月以降の開始を求める声もありましたが、十分な検知器が年内に供給されると判断されたようです。
対象となる事業者は白ナンバー5台以上、または定員11人以上の車を1台以上使用する事業者で運転前後の検査結果を1年間保存することが求められています。
この記事では、対象となる事業者の安全運転管理者の方や働いている従業員さんに向けてアルコール検知器の使用義務化について詳細や背景をわかりやすく解説します。
もくじ
新たなアルコール検知(チェック)義務化のポイント
2011年からバスやタクシーなどの「緑ナンバー」の車両を使う運送会社にはアルコール検知義務がありましたが、今回「白ナンバー」車を使用する事業者に対しても検知義務が発生します。
その背景や対象の事業者について解説します。
なぜ今、義務化の動きが加速した?その背景は?
近年、飲酒運転による事故が増加しており社会的な問題として注目されています。この問題を解決するための一環として、アルコール検知器の使用を義務化する方針を固めたようです。
警視庁のサイトでは、令和5年12月1日からアルコール検知器の使用義務化規定を施行する経緯として小学校下校中のトラック事故が挙げられています。
令和3年6月に千葉県八街市で、下校中の小学生の列に飲酒運転のトラックが衝突し、5名が死傷する事故が発生
今までアルコール検知器によるアルコールチェックを義務化していなかった「白ナンバー」車に義務化を制定した背景には飲酒運転による事故の増加や、社会への影響が高いことが背景として考えられます。
そもそも対象となる「白ナンバー」車を持つ事業者とは?
「白ナンバー」は自家用の普通自動車です。
事業に関係なく日常で普通車を乗る方にお馴染みの白ナンバーですが、事業者(会社)所有の車で社員の移動や自社の商品を運ぶ用途に使う車であれば事業者でも「白ナンバー」がついている車を使うことができます。
業者さんの車でお馴染みの「緑ナンバー」は運賃をもらって人や荷物を運ぶ場合に必要な事業用普通自動車のことで2011年からアルコール検知器による検査が義務付けられています。
今回の「アルコール検知器の使用義務化規定」の対象となる白ナンバー車を利用する事業者は、
- 白ナンバー車5台以上を保持する企業
または、
- 乗車定員が11人以上の白ナンバー車1台以上を保持する企業
どちらかに該当する事業者です。
これは、安全運転管理者を選任している会社に該当します。
安全運転管理者(道路交通法施行規則第9条の8)
乗車定員が11人以上の自動車にあっては1台、その他の自動車にあっては5台以上を使用している事業所(自動車使用の本拠)ごとに1名を選任する。
対象となる事業者数は32万5千事業者なので、今回の「アルコール検知器の使用義務化規定」によって影響がある事業者(会社)はかなり多いです。(参考:自動車安全運転センターPDF)
アルコール検知義務化は過去数回見送られていた
2022年10月1日より実施される予定でしたが、対象となる事業者が多い半導体不足に伴うアルコール検知器(アルコールチェッカー)の不足を理由に延期されていました。
その後、事業所へのアンケートやパブリックコメントなどの状況からアルコール検知器の市場における調達が十分に行いうる環境となっていると判断され2023年12月から実施となりました。
- 本年4月にとりまとめた全国の安全運転管理者等に対して実施したアンケート結果では、約7割が「必要台数の全てを入手済」と回答
- 本年6月、アルコール検知器協議会から以下の内容を確認
・ 半導体不足や物流停滞も改善し、安定したアルコール検知器の生産・供給が可能な状況となっている
・ 準備期間をみても、令和5年12月からのアルコール検知器の使用義務化規定の適用は対応可能 - アルコール検知器の市場における調達が十分に行いうる環境となっているといえる。
引用:警視庁サイトPDF(アルコール検知器使用義務化規定の適用について)
アルコール検知器の基準は?どんなものを選べばいいの?
警視庁のWebサイトによると、
酒気帯びの有無の確認に使用する検知器は、「呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する検知器」と定められています。
引用:警視庁サイトPDF(アルコール検知器を用いること)
また、安全運転管理者の業務として運転者に対して運転の前後に「アルコール検知器を使用して確認すること」となっている点に注意が必要です。
また、アルコール検知器には測定方式による違いや使用期限がありますので選ぶ際には確認することが重要です。
おすすめのアルコール検知器
誤検知が少ない電気化学式ガスセンサを搭載したモデル。使い方が簡単で大型デジタル表示なので確認がしやすいです。アルコール検知器協議会の認定機器だから安心です。
アルコール検知器協議会を参考にする
アルコール検知器ならなんでもいいというわけではありません。
通販サイトなどでは海外製の安価な粗悪品も見受けられます。アルコール検知器を選ぶ際に迷ったら「アルコール検知器協議会」のサイトを確認し適切なものを選ぶようにしましょう。
義務違反時のペナルティは?知っておきたい罰則内容
道路交通法の改正により、安全運転管理者の選任義務違反に対する罰則が厳格化されています。
令和4年の道路交通法の改正により、安全運転管理者の選任義務違反に対する罰則が、5万円以下の罰金であったものが、50万円以下の罰金に引き上げられました
引用:警視庁サイト(安全運転管理者の業務の拡充等|警察庁Webサイト)
上記は、対象事業者になったときの選任義務違反をしたときの罰則ですが酒気帯び運転・飲酒運転自体をした運転手本人及び運転させた企業への罰則について紹介します。
運転手本人への罰則
行政処分
- 酒酔い運転基礎点数 35点
免許取消し 欠格期間3年 - 酒気帯び運転呼気中アルコール濃度0.15mg/l 以上 0.25mg/l 未満
基礎点数 13点
免許停止 期間90日呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上
基礎点数 25点
免許取消し 欠格期間2年(※2,3)
罰則
- 酒酔い運転をした場合
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 - 酒気帯び運転をした場合
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
運転手がお酒を飲んで運転をすると、今後の数ヶ月〜数年は運転ができなくなる行政処分と重い罰金の両方が発生します。
企業への罰則
「車両を提供した者」の罰則を紹介します。
- (運転者が)酒酔い運転をした場合
5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 - (運転者が)酒気帯び運転をした場合
3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
企業についても、重い罰金が発生します。
そして何より社会的信用を失ってしまう重大な問題になってしまいます。
アルコール検知義務化の準備をして安全な運営をしよう
今回のアルコール検知義務化は、今までの安全確認にアルコール検知器を使ってきちんと数字で安全を管理することが主旨だと思います。
飲酒運転での事故は毎年多数発生しているので「飲酒運転を絶対にさせない」職場環境づくりは企業にとって重要なことです。
新たに法施工されるということは、今まで安全を重視しきちんと安全管理を実施していた事業者も多い一方で管理が杜撰な企業もいるのが現状ということです。
この記事を読んでくださっている方は安全に対する意識が高いと思いますが自分が働いている企業の安全管理がどうなのか確認する機会になれば幸いです。