「モラトリアム(moratorium)」は、日本でよく使われる言葉です。
一般的な意味では、大人としての年齢や肉体的発達はしているものの、大人になりたくないと思っている心理や大人になるための選択などを先延ばしにしているような人のことを指します。
日本ではネガティブなイメージの言葉ですが本来の心理学用語のモラトリアム(moratorium)は、大人になるために必要な、社会的に認められた必要な猶予期間をさしますので、否定的な意味ではありません。
モラトリアムについて考えていきましょう。
もくじ
モラトリアムとは?
モラトリアムの本来の意味は「支払猶予」や「執行猶予期間」などのことをいいます。
天変地異や大恐慌が発生したときに経済的な混乱を小さくすることを目的として、一時的に決済に猶予を持たせるときなどに用いられる言葉として生まれた歴史がありますし、死刑が執行されたり法律が施行されたりするまでの期間を指すことも多かったようです。
しかし、現代においては違う意味で用いることが増えています。
人間の肉体や精神の状態を表すときに用いられるようになっていますね!
現在は一人前になって独立するまで、大人としての義務や責任から解き放たれている時期を猶予期間と見なしてモラトリアムと呼んでいることが多いです。
- 大学卒業後に2年間モラトリアムな期間がありました。
- いっぱい時間はあったのに締め切り間際に提出なんてモラトリアムだね
など、現実から逃げていた期間にモラトリアムという言葉を使います。
モラトリアム人間とは?
モラトリアム人間とは、人生の岐路に立って選択をすることを避けている人のことをいいます。
身体的には大人になっており、知性の面でも子どもではないのに自分を大人として認識できていない状況のことをモラトリアム人間といいます。
精神的に熟しておらず自己形成の過程に留まっており、大人の仲間入りができずにいるのです。そうやって社会に出ることをひたすら延期する状態を続けている人が多いのでモラトリアム人間という言葉が生まれました。
- ピーターパン症候群
大人になりたくない、永遠に年を取らず子供のままでいたいという願望が強い人 - ニート
15歳から34歳の未婚で、就労の意思がない人
成人しても働かずに不平不満を言っている人のことということが多いですが、その背景には過剰な自意識が潜んでいるのが一般的です。
自分の理想像を持っていて現実の自分はそれからかけ離れていると感じています。
会社の中にも他人に責任転嫁ばかりしている大人の人って結構多いですよね。
モラトリアム人間の特徴とは?
- 大学卒業後も定職につかない
- 社会的な自己が確立していない
- 目標がない
- 決断力が低い
モラトリアム人間は、就職をしてもすぐに退職してしまう傾向があります。
「自分にはもっと実力がある、本来の自分はこんなはずではない」と他人のせいにして上司や同僚のことをネガティブに思っている傾向があるため、会社や社会に溶け込む努力を避けて、周囲との信頼関係を築きにくい状態の人を指す言葉です。
モラトリアム人間は自分の現状を否定する傾向にあるのに、物事を自分で決められないため、人生における目標を決めることに無気力になってしまうことが多いようです。
モラトリアムを抜け出すには?
モラトリアムから抜け出すには、理想ばかり夢見るのではなく現実を直視すること。
自分の義務や責任がどのようなものかを理解して、それを背負って自立するために努力する必要があると言われています。
親や周りから決められたレールの上で頑張って大学を卒業して、いざ自律しないといけない歳なのに自分のことを決められない状態のことです。
実際にモラトリアムになって社会人になれない人もいますが、社会人になって抜け出せない人がいます。
転職を繰り返していた後輩の話
後輩で、つい最近まで何をやってもすぐ諦めてしまう子がいました。
彼は、転職を繰り返して今の会社もすぐに辞めてしまいそうでした。
いつも言い訳ばかりで会社の悪口ばかり。仕事も前向きに取り組むことはありませんでした。
ひどい時は現場の仕事を放り出して帰ってしまうこともあったのです。
工事現場の仕事は、職人さんとの連携もあるので仕事への姿勢が前向きでないとコミュニケーションが上手くいかないんですよね。
しかし、去年くらいから仕事の仕方が変わってきました。
当時は仕事に慣れてきたのかな?くらいにしか会社のみんなも思っていませんでしたが、難しい案件も職人さんと一緒にこなすようになって周りの見る目も変わってきました。
きっかけは、資格を習得したこと
電気系の資格でDD3種の資格は初期でとるべき資格。
その資格を取得した頃から彼は変化していきました。
今まで任されなかったような仕事も1人でこなすようになり、周りの人を自分から巻き込んで仕事を完了させることができるようになっていました。
実際に、彼がモラトリアム人間だったのかは正確にはわかりませんが、周りからの評価が変わったのは事実です。
後輩と仕事のことについて話す機会があったので、仕事に対する話を聞くと、
「最近仕事が楽しいです!責任のある仕事もっとやらせてください」
と話してくれました、きっと彼の中で資格を取得したことが何かのきっかけになったんだと思います。
目標を達成するとモラトリアムから抜け出せるかもしれない
後輩の事例でもそうですが、モラトリアム人間から脱却するには現状を理解して目標を自分で決めて達成すること。
自分が前進していることを実感できることが大切なんだと思います。
周りから何か言われても否定するばかりだった後輩も自分で決めた目標を達成してから考え方が変わったようでした。
目標の難易度は仕事の内容によって変わりますが、小さな目標から徐々に達成していけば自分のことを認めていくことができるのではないでしょうか。
また、自分の現状把握をするのもモラトリアムを抜け出すには効果的と言われています。
今までの経験や経歴を整理すると自分が取り組まないといけない課題が見えてくるからです!
難易度の低い資格の勉強はおすすめ!
仕事に目標が見出せなければ、目標を資格の取得にしてしまうのも効果的だと思います。
できれば、仕事に直結する資格の中で難易度が低めのものからチャレンジしてみると達成感が味わえるのでおすすめです。
簡単な資格の取得が目標に適している理由は、頑張った成果がはっきり残ります。
履歴書にも書けますし、知識もつくので転職をする時にも自分を助けてくれます。
徐々に難易度が高い資格を取得すれば、現場監督など高いステータスの仕事ができるようになるのも建築系の資格の醍醐味です。
まとめ
自分のことをモラトリアム人間だと感じている場合は、とにかく行動してみることが大切!
モラトリアムになると他人と自分を比べてしまいがちですが、他人を変えることはできないので自分を変えることしかできないからです。
怖がらずに行動することで、自分を理解することができると同時に、ただ待っているだけでは何も変わらないということを理解することができます。