現場で安全靴を履くように言われるのは、会社が勝手に決めたからではありません。もとをたどると、労働安全衛生規則という国の決まりに行き着きます。
ただし条文をそのまま読むと、少し形がちがいます。「どこでも安全靴」ではなく、作業に合った履物を会社が決めて使わせる、という書き方です。
この記事では条文そのものを確かめながら、安全靴の着用義務を整理します。履かなかったときの労災の扱いと、代金を誰が出すのかもあわせて説明します。
法令は e-Gov 法令検索で確かめた原文を載せます。規格の中身は、ミドリ安全と日本保安用品協会の公式ページで確かめました。確認日は2026年9月24日です。

- 安全靴の着用義務を定めた条文の中身と、会社側・働く人側それぞれの義務
- 自分で買った安全靴を履いていいのか。会社が何を指定しているかの見分け方
- 安全靴を履かずにケガをしたとき、労災はどう扱われるのか
- ふつうのスニーカーが代わりにならない理由と、スニーカー型の作業靴のちがい
- 作業区分(超重作業用U・重作業用H・普通作業用S・軽作業用L)の選び分け
- すべりやすい床・足が小さい人・重さが気になる人の、条件別の選び方
- 安全靴の代金は会社負担か自腹か。就業規則のどこを見ればいいか
JIS規格とJSAA規格のちがいをくわしく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
安全靴の着用義務は法律のどこに書いてある?
根拠になっているのは、労働安全衛生規則の第558条です。見出しは「安全靴等の使用」となっています。
条文は2つの項に分かれています。e-Gov 法令検索で確かめた原文は次のとおりです。
第五百五十八条 事業者は、作業中の労働者に、通路等の構造又は当該作業の状態に応じて、安全靴その他の適当な履物を定め、当該履物を使用させなければならない。
2 前項の労働者は、同項の規定により定められた履物の使用を命じられたときは、当該履物を使用しなければならない。出典:e-Gov 法令検索 労働安全衛生規則 第五百五十八条(2026年9月24日に確認)
条文が求めているのは「作業に合った履物を会社が決めること」
大事なのは「安全靴その他の適当な履物」という言い方です。すべての職場で安全靴と決まっているわけではありません。
通路の状態や作業の内容に応じて、会社が何を履かせるかを決めます。重い物を扱う、足の上に落ちるおそれがある。そういう作業では安全靴になります。
つまり「安全靴を履け」は現場の慣習ではなく、法律にもとづく会社の指示です。建設現場で入場を断られるのは、元請けの入場ルールや安全協定が上乗せされているからです。
自分で買った安全靴を履いてもいいのか
第2項は、命じられた履物を使わなければならないと決めています。問題は、会社が何を「定めた」のかです。
多くの職場では、規格と作業区分で定めています。その場合は、条件に合う靴を自分で買って履けることがあります。
一方、会社が商品名まで指定していることもあります。支給品しか認めない職場では、勝手に替えることはできません。
どちらなのかを確かめるのが先です。いちばん早いのは、いま履いている支給品の表示を見ることです。
ベロ(足の甲に当たる舌の部分)をめくると、裏に布のタグが付いています。そこに JIS T8101 とあれば、次もJIS規格の中から選べば条件は外しません。
安全靴を履かないとどうなる?労災と罰則の話
結論から言うと、安全靴を履かずにケガをしても労災の申請はできます。まず、そこだけ押さえてください。
ただし、まったく不利にならないわけではありません。どこに線があるのかを見ていきます。
安全靴を履かずにケガをしたとき、労災はどうなるか
ここは誤解が広まっているところです。検索すると、こんな書き込みが上位に出てきます。
会社で安全靴を指定されてるのにスニーカー履いてて怪我したら労災使えないかもね
これは一般の人の書き込みで、法律の説明ではありません。労災保険は、仕事が原因のケガなら申請できます。
ただし給付を減らせる定めはあります。労働者災害補償保険法の第12条の2の2です。
第十二条の二の二 労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。
2 労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。出典:e-Gov 法令検索 労働者災害補償保険法 第十二条の二の二(2026年9月24日に確認)
第2項は「行わないことができる」であって、「必ず行わない」ではありません。重大な過失にあたるかどうかは、法律に定義がなく個別に判断されます。
- その場で会社に報告する。自分で「これは労災にならない」と決めない
- 病院では仕事中のケガだと必ず伝える(健康保険ではなく労災保険で扱う)
- 安全靴を履いていなかった場合でも、申請そのものはできる
- 会社が手続きをしてくれないときは、勤め先を管轄する労働基準監督署に相談できる
罰則はどちらにあるのか
規則が義務を課している相手は、まず会社です。履物を定めず、使わせなかった場合は、労働基準監督署の指導や是正勧告の対象になります。
働く人が履かなかった場合はどうなるのか。第2項に違反したことになりますが、本人がどうなるかは条文だけでは決まりません。
実際に起きるのは、会社からの注意や、就業規則にもとづく処分です。現場では入場を断られることもあります。
罰則の重さを気にするより、指定された靴を履くほうが早く済みます。足をケガすると、働けなくなるのは自分だからです。
安全靴の代わりにスニーカーではダメな理由
「安全靴 スニーカー ダメ」は、この話題でよく検索される言葉です。ふだんの運動靴では、なぜ代わりにならないのでしょうか。
理由は、つま先に先芯(さきしん)が入っていないからです。先芯は、つま先を守るかたい板のことです。
ふつうのスニーカーには、この先芯がありません。見た目が丈夫でも、物が落ちてくれば足の指は守れません。
同じ質問への回答には、現場に入れないという声もありました。
スニーカータイプの安全靴ならありますが、スニーカーを安全靴代わりに使うのはNGでしょうね。現場入れないと思います。
もちろん、足に危険のない作業まで安全靴が要るわけではありません。会社が安全靴を定めている作業では、運動靴に替えられないということです。
紛らわしいのが、スニーカーの形をした作業靴です。見た目は運動靴でも、先芯が入っていて規格に合格しているものがあります。
それが次からの章で説明する、JIS規格の安全靴とJSAA規格のプロスニーカーです。ちがいを図にまとめました。

- JIS T8101の安全靴は国が定めた日本産業規格で、甲被(こうひ・足の甲を覆う部分)は革製か総ゴム・総高分子製
- 総高分子製とは、ゴム以外の樹脂だけで作った靴のこと(2020年の改定で加わった区分)
- JIS規格の作業区分は超重作業用U・重作業用H・普通作業用S・軽作業用Lの4つ
- JSAA規格のプロスニーカーは日本保安用品協会が認定し、素材の自由度が高い
- JSAA規格の作業区分はA種とB種の2つで、つま先の強さはJIS規格のS種・L種と同じ
安全靴とプロスニーカーの使い分けは、こちらの記事を参考にしてください。
JIS規格の安全靴が「本当の安全靴」と呼ばれる理由
先芯が入っていれば、どれでも安全靴と呼べるわけではありません。ミドリ安全の公式サイトは、次のように説明しています。
一般的に、保護性能を持った先芯を搭載した靴が総称として安全靴と呼ばれることがありますが、正しくは既定の材料を使用しJIS認可工場で製造された靴で、JIS規格の安全性・耐久性を満たした靴を「安全靴」と呼びます。
材料の決まりがあり、認可を受けた工場で作られ、試験に通ったものだけが安全靴です。値段の高い安いではなく、この条件を満たしているかどうかで決まります。
JISマークは買う前に必ず確かめる
靴の外側からは、先芯が入っているかどうかは見えません。確かめる方法は、箱の表示か、ベロの裏に付いた布タグを見ることです。
JISマークかJSAAの型式認定タグがあるかを、買う前に見てください。通販の場合は、商品ページの規格の欄に書いてあります。
表示のない先芯入りの靴も売られています。その場合、つま先の強さがどれくらいなのかを確かめる手がかりがありません。
規格の記号はこう読む
商品ページには「JIS T8101 CⅠ/S/P1/F1」のような記号が並びます。並び方は商品によって変わるので、1つずつ意味を押さえるのが早道です。
- はじめの記号は材料区分。CⅠは甲被が革製、CⅡは総ゴム・総高分子製
- 次が作業区分。U・H・S・L(超重作業用・重作業用・普通作業用・軽作業用)
- 3つ目から先は、カテゴリー表示(P1〜P5)か、付加的性能の記号が並ぶ
- P1〜P5 はミドリ安全が公開している表示例では E(かかと部の衝撃エネルギー吸収性)を含む組み合わせ。立ち仕事でかかとのクッションを気にする人は、この表示を目印にできる
- くぎなどを踏み抜きにくい性能(耐踏抜き性・記号P)が付くのは P2・P3・P5
- F1・F2 はすべりにくさの区分で、F2 のほうがすべりにくい。表示がない商品もある
- H は表底の耐高熱接触性、BO は表底の耐燃料油性
記号の意味は、ミドリ安全が公開している規格改定の解説で確かめました。迷ったときは、商品ページの規格の欄をそのまま会社に見せるのが確実です。
すべりやすい床では F2 か「耐滑」の表示を探す
食品工場のように、水や油で床がぬれる職場があります。そういう現場では、すべりにくさの表示が効いてきます。
区分2(F2)の方が耐滑性は高くなっています。これは床との相性によって、食品加工業などでより滑りにくい安全靴の必要性が生じてきていることによります。
JIS規格で選ぶなら、表示に F2 が入っているものを探してください。ミドリ安全では「超耐滑」「ハイグリップ」と名前が付いたシリーズがこれにあたります。
JSAA規格のプロスニーカーには、F1・F2 の区分表示はありません。代わりに認定の内容に「耐滑」と入っているかを見ます。
この記事で後に紹介する WL-110 と AS-05 は、どちらも耐滑の認定が付いています。ぬれた床で働く人は、この表示を手がかりにしてください。
2020年にJIS T8101が改定された
先に安心できる話を書きます。旧版で合格した靴は、そのまま使えます。手持ちの靴の箱に古い表示が残っていても大丈夫です。
そのうえで、何が変わったのかをミドリ安全の公式ページで確かめました。おもな変更点は次のとおりです。
- 試験方法が JIS T8107 として独立した規格になった
- 作業区分に超重作業用のU種が加わった(それまでは重作業用が最上位)
- 付加的性能(耐踏抜き性・耐滑性など、つま先の強さ以外の性能)の項目が4項目から12項目に増えた
- 耐滑性が F1・F2 の2区分に分かれた
- 材料区分に総高分子製が加わった
作業区分(U・H・S・L)で選ぶJIS規格の安全靴
特別な指定がない現場なら、普通作業用のS種を選んでおけば範囲は足ります。ここから先は、指定がある人と、もっと強いものが要る人の話です。
JIS規格の安全靴は、つま先の強さで4つに分かれています。確かめる試験は2種類あります。

1つは、20kgのおもりを落とす試験です。落とす高さは超重作業用が102cm、重作業用が51cm、普通作業用が36cm、軽作業用が15cmです。
もう1つは、上から押しつぶす試験です。超重作業用と重作業用が15kN、普通作業用が10kN、軽作業用が4.5kNまで耐えます。
台車に乗られる、資材が乗っかる。そういう現場で効いてくるのは、落とす試験よりこちらの数字です。
指定があるかどうかは、職長か安全担当に聞くのが早いです。元請けの指定は、現場の安全書類や新規入場時の教育で示されることが多くあります。
普通作業用(S種)で値段を抑えたいとき
普通作業用の中で、値段を抑えたひもタイプがミドリ安全のG3550です。革の表面にベロア(起毛させた革)を使っています。

販売価格は4,444円(税込・税抜4,040円)です
- JIS規格で普通作業用を指定される現場に、そのまま持っていけます
- 規格の表示は JIS T8101 CⅠ/S/P1/F1(革製・普通作業用・すべりにくさは区分1)
- 先芯はワイド樹脂。つま先の広い樹脂の先芯で、鋼製より軽く作られています
- 両足で830g(26.0cm)。甲被は牛クロム革(ベロア)、靴底は発泡ポリウレタン2層底
- サイズは23.5〜28cm、足幅はEEE(3E)
- 靴底には、減ってきたことがわかるスリップサインが入っています
スリップサインは靴底の模様に埋めこまれた印で、すり減って印が消えたら替えどきの目安です。
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重さはどれも26.0cmを基準にした数字です。サイズが小さければ、その分だけ軽くなります。
作業服店やホームセンターでも、同じJIS規格の靴は買えます。現物を見て決めたい人は、店で試着してからでも遅くありません。
重作業用(H種)を指定される現場向け
重い資材や鉄骨を扱う現場では、重作業用のH種を指定されることがあります。指定がなければ、ここは読み飛ばしてかまいません。

- 重作業用(H種)を指定されたときに選べる、短靴タイプです
- 規格の表示は JIS T8101 CⅠ/H/H/BO(革製・重作業用・表底の耐高熱接触性・表底の耐燃料油性)
- 先芯はワイド鋼製。重作業用の強さを満たすために、樹脂ではなく鋼を使っています
- 足幅は4E(EEEE)。幅で困っている人にはいちばん広い選択肢になります
- 甲被はソフト型押の牛クロム革、靴底は合成ゴム1層底
- サイズは23.5〜27cmと28cm
幅が広すぎると靴の中で足が動きます。試着できるなら試してから決めてください。
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足の甲に物を落とす心配がある作業では、甲プロテクターの付いた型を選びます。甲プロテクターとは、足の甲の上に載せる金属や樹脂の覆いのことです。
商品名に「甲プロ」と入っていたり、M2のような記号で強さが示されていたりします。型枠や資材の運搬をしている人は、会社に指定があるか聞いてみてください。
メーカー別の評価や口コミから選びたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
安全靴の規格の区分(U種・H種・S種・L種)を確かめたいときは、姉妹サイトの安全靴.com の安全靴の規格のページが便利です。
JSAA規格のプロスニーカーはどこまで使える?
スニーカーの形をした作業靴は、JSAA規格のプロスニーカーと呼ばれます。認定しているのは、公益社団法人 日本保安用品協会です。
どこまでの作業に使えるのか。協会の公式サイトの説明を引用します。
プロテクティブスニーカー規格(JSAA規格)は、JISを基に作られた規格です。つま先の保護性能については、安全靴のS種・L種と同じ性能を持っていますが、甲被材料や底材については、安全靴に比べ耐久性が低く設定されており、普通作業~軽作業に適した靴を認定する規格となっています。
つま先の強さ自体は、JIS規格の普通作業用・軽作業用と同じです。差が出るのは、甲の素材と靴底の耐久性です。
そのため、JIS規格を指定されている現場ではプロスニーカーは使えません。指定がなく、普通作業から軽作業の範囲なら選べます。
A種が普通作業用、B種が軽作業用です。倉庫や工場の一般的な作業なら、A種で範囲は広くカバーできます。
軽さを優先したいときのプロスニーカー
プロスニーカーの利点は、革製の安全靴より軽いものが多いことです。ミドリ安全のWL-110は、両足で700g(26.0cm)です。
ここから紹介する3足は、どれもJSAA規格です。JIS規格を指定されている現場では使えないので、先に会社の指定を確かめてください。

- 夕方の足のだるさが気になる人が、まず試しやすい軽さです
- 両足700g(26.0cm)。革製のG3550より130g軽く、重作業用のW251Nより440g軽い
- 規格は JSAA認定 A種 人工皮革製プロスニーカー(踵衝撃吸収・耐滑)
- 耐滑の認定が付いているので、ぬれた床の職場でも候補になります
- 甲被は人工皮革とメッシュ、先芯はワイド樹脂
- サイズは22.0〜28.0cmと29.0・30.0cm、足幅はEEE(3E)
靴底はEVAと合成ゴム。減りがわかるスリップサインが付いています。
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調査でいちばん多かったメーカーから選ぶ
当サイトが仕事で安全靴を履く50人に聞いたところ、アシックスが24人でいちばん多い結果でした。そのうち3人が履いていたのが、ウィンジョブのCP201です。
50人調査でアシックスを履いていたのは24人。メーカー別でいちばん多い結果でした
規格はJSAA規格A種のプロスニーカーです。先芯はガラス繊維で強くした樹脂で、甲被は人工皮革と合成繊維です。
片足で約360g(26.5cm)なので、両足では約720gになります。足幅は3E相当、サイズは21.5〜30.0cmと幅広く、中敷きは取り外せます。
販売店では9,500〜11,000円ほどで売られていました。アシックス公式サイトのページが開けなかったため、販売店の商品ページで2026年9月16日に確かめた内容です。
デザインも重視して選びたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
足が小さい人・足幅が細い人の選び方
ここまで紹介した靴は、足幅がEEE(3E)や4Eのものが中心です。足が細い人や、23cmより小さいサイズを探している人には合いません。
その場合は、EE(2E)の表示があるモデルを探してください。足幅がわからないときは、作業服店や靴店で測ってもらえます。

- 21.0cmから選べるので、支給品が大きすぎて中で足がすべる人に合います
- 足幅はEE(2E)。この記事で紹介する中では、いちばん細い作りです
- サイズは21.0cmと22.0〜25.0cm
- 規格は JSAA認定 A種 人工皮革製プロスニーカー(踵衝撃吸収・耐滑)
- 留め具は面ファスナー2本で、ひもを結ばずに脱ぎ履きできます
- 両足で720g(23.5cm基準)。販売価格は7,326円(税込・税抜6,660円)
こちらも耐滑の認定が付いています。ぬれた床の職場でも候補になります。
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会社から支給された靴が合わない場合も、まず相談してみてください。「支給されている靴の下のサイズはありますか」と聞くだけで替えてもらえることがあります。
安全靴の中敷を交換するときの決まり
蒸れや臭いの対策として、中敷を市販のものに替えている人は多いです。ここは2020年の改定で扱いが変わりました。
中敷を交換する場合には、安全靴の同一メーカーの同等品に限定するように規定されました。
これは規格の側の決まりです。別のメーカーの中敷に替えると、JIS規格として認定された状態ではなくなります。
替えたら法律違反になる、という意味ではありません。ただし会社がJIS規格品であることを条件にしている場合は、その前提が崩れます。
厚みが変わると、つま先と中底のすきまも変わります。このすきまは規格の試験項目なので、中敷は性能の一部として扱われています。
それでも中敷を替えたいときは、同じメーカーの交換用中敷を探してください。多くのメーカーが、自社の靴に合う交換用を別売りしています。
靴の中で足が動く、かかとが浮く。そんなときは、中敷より先にサイズと足幅を見直します。支給品でサイズを選べない場合は、合っていないことを会社に伝えてください。
同じメーカーの中で中敷を選ぶときの見方は、こちらの記事を参考にしてください。
安全靴の費用は会社負担か自腹か
会社が支給してくれる職場もあれば、自腹で買う職場もあります。この差はどこから来るのでしょうか。
労働安全衛生規則が会社に求めているのは、履物を定めて使わせることです。代金を会社が出すこと、とは書かれていません。
費用の負担に触れているのは、労働基準法の第89条です。就業規則に書かなければならない事項を並べた条文で、その第5号が次の内容です。
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
出典:e-Gov 法令検索 労働基準法 第八十九条第五号(2026年9月24日に確認)
これは「負担させるなら就業規則に書きなさい」という条文です。書けば何でも負担させてよい、と決めた条文ではありません。
就業規則に何も書いていないのに自腹を求められたら、根拠を確かめる余地があります。まずは就業規則のどこに書いてあるかを聞いてみてください。
実際の職場の分かれ方は、こんな声からもわかります。
安全靴も色々あり、会社が支給した物のみ着用が許可されている、事業所もあれば、安全靴の着用は必須であるが、安全靴に関しては本人が購入した物でもokの職場(会社)もあります。
会社に聞くときは、この6つをまとめて確かめる
靴を買ってから「規格がちがう」と言われるのは、いちばん避けたい失敗です。買う前に、次の内容をまとめて聞いておくと確実です。

- JIS規格の指定はあるか、JSAA規格でもいいか
- 作業区分は何か(普通作業用のSか、重作業用のHか)
- 会社が支給するか、自分で買うか
- 自分で買う場合、補助や上限の金額はあるか
- 静電気対策や甲プロテクターの指定はあるか
- 履き替えの目安(何年で交換か)は決まっているか
時間がなくて1つしか聞けないなら、「JIS規格の指定はありますか」です。ここが決まれば、選べる靴の範囲が半分に絞れます。
聞く相手は、職長か安全担当、パートなら現場のリーダーです。「安全靴を買い替えようと思うのですが、規格の指定はありますか」から入ると切り出せます。
重い・硬い安全靴と付き合う方法(仕事で履く50人の声)
義務だとわかっていても、履き心地の問題は残ります。当サイトでは、仕事で安全靴を履いている人50人にアンケートを行いました。

満足している点で多かったのは、履き心地がいい13人、軽い11人でした。選択式の設問なので、1人が1つを選んでいます。
一方、自由記述には重さや硬さへの不満が並びました。原文のまま紹介します。


先端に鉛が入っていると書かれていますが、規格で使われる先芯は鋼製か樹脂製です。重さの理由は、先芯だけでなく革の厚みや靴底の作りにもあります。

スニーカータイプでも、安全靴らしい重さと硬さは残るという声です。ただ、軽さについては変わってきたという声もありました。

JIS規格のまま軽い靴はあるのか
重さを分けているのは、規格そのものではありません。先芯の素材、革の厚み、靴底の作りで決まります。
この記事で紹介した靴の重さを並べると、差がはっきりします。すべて両足・26.0cmの値です。
- JSAA規格のWL-110(樹脂先芯・人工皮革とメッシュ・EVA底)が700g
- アシックス ウィンジョブCP201(樹脂先芯・人工皮革と合成繊維)が約720g
- JIS規格の普通作業用G3550(樹脂先芯・牛革・発泡ポリウレタン2層底)が830g
- JIS規格の重作業用W251N(鋼製先芯・牛革・合成ゴム1層底)が1,140g
JIS規格でも、普通作業用で樹脂先芯なら800g台に収まります。プロスニーカーとの差は130g前後で、思ったほど大きくありません。
重いのは、重作業用を選んだときです。鋼製の先芯と厚い靴底が必要なので、普通作業用より300g以上重くなります。
JIS規格を指定されていて重さも減らしたいなら、樹脂先芯の普通作業用を探してください。商品ページの先芯の欄に、樹脂か鋼製かが書いてあります。
もう1足、軽いものを用意するという手
毎日同じ靴を履くと、中がへたるのも汗が乾くのも早くなります。2足を交互に履ける人は、そのほうが長もちします。
50人調査では、Asa(40代・女性)がこのオールマイティ HWII 11L について「柔らかくて足にピタッとフィットするような感じ」と書いていました
規格はJSAA規格A種のプロテクティブスニーカーです。甲材は人工皮革と合成繊維、合成皮革を組み合わせています。
片足で約400g(26.0cm)なので、両足では約800gになります。サイズは24.5〜28.0cmと29.0cm、3E(ワイド)相当の足幅の方向けです。
希望小売価格は14,080円(税込)。2026年9月24日にミズノ公式サイトで確かめました。
蒸れや足の痛みは、靴の重さとは別の原因があることもあります。それぞれの対策は、別の記事にまとめました。
安全靴の重さで悩んでいる方は、こちらの記事を参考にしてください。
夏の蒸れが気になる方は、こちらの記事を参考にしてください。
条件から選ぶときの早見表
ここまでに出てきた靴を、条件別に並べ直しました。会社の指定を確かめたあとの、絞り込みに使ってください。
- JIS規格の指定あり・普通作業用・予算を抑えたい → G3550(4,444円・両足830g)
- JIS規格の指定あり・重作業用 → W251N(7,612円・両足1,140g・4E)
- 規格の指定なし・軽さと値段を優先 → WL-110(5,511円・両足700g)
- 規格の指定なし・22.5cm以下や細い足幅 → AS-05 EE(7,326円・21.0cmから・EE)
- 規格の指定なし・アンケートで最多のメーカーから → アシックス ウィンジョブCP201
- ぬれた床で働く → JIS規格なら F2 の表示、JSAA規格なら耐滑の認定があるもの
静電気対策が必要な現場の安全靴
電子部品の工場や、引火のおそれがある場所では、別の規格の靴を指定されます。JIS T8103 の静電気帯電防止靴です。
ミドリ安全の公式ページでも、JIS規格には主にこの2つがあると説明されています。つま先を守る T8101 と、静電気を逃がす T8103 です。
静電気帯電防止靴にも、普通作業用のS種と重作業用のH種があります。先芯のないタイプもあるので、会社の指定を確かめて選んでください。
静電靴の仕組みと選び方は、こちらの記事を参考にしてください。
安全靴の着用義務でよくある質問
検索でよく調べられている疑問をまとめました。答えだけ読んでもわかるように書いています。
安全靴は何年で買い替えればいいですか?
何年という決まりは規格にありません。靴底のスリップサインが消えた、先芯のまわりの革が裂けた、といった状態が目安です。
靴底が残っていても、中のクッションはへたります。履いたときに前より疲れる、かかとが沈む。そう感じたら替えどきです。
通販で買ってサイズが合わなかったら交換できますか?
店によって決まりが違います。注文の前に、返品と交換の条件を商品ページで確かめてください。
一度履いた靴は返せないことがほとんどです。不安なら、同じ型を店で試着してから通販で買う方法もあります。
会社が安全靴を支給してくれないのは違法ですか?
支給しないこと自体は、ただちに違法とはいえません。就業規則に自己負担の定めがあるかどうかを、まず確かめてください。
定めがないのに負担を求められている場合は、根拠を聞く余地があります。納得できないときは、労働基準監督署の相談窓口で聞けます。
会社が指定した安全靴が合わないときはどうすればいいですか?
まずサイズと足幅の在庫を聞いてください。同じ型で下のサイズやEEの幅がある場合があります。
それでも合わないときは、規格と作業区分だけ指定してもらい、自分で選べないか相談する方法もあります。
アルバイトや派遣でも安全靴の着用義務はありますか?
あります。条文は「作業中の労働者」と書いていて、雇い方では分けていません。パートやアルバイトも同じ扱いです。
派遣の場合は、実際に働く現場の会社が履物を定めます。支給の有無は、派遣元と派遣先のどちらに聞けばよいか確かめてください。
JISマークのない「安全靴」は買ってはいけませんか?
規格の指定がない現場なら、それだけで違反にはなりません。ただ、つま先の強さがどれくらいなのかを確かめる手段がなくなります。
足の上に物が落ちる可能性のある作業では、JIS規格かJSAA規格の表示を選んでください。表示は、買う前に外から確かめられる数少ない手がかりです。
まとめ:安全靴の着用義務を自分の現場に当てはめる
条文が求めているのは、作業に合った履物を会社が決めて使わせることです。そして決められた履物を使う義務は、働く人の側にもあります。
だから、この記事を読んだあとにやることは1つです。自分の現場で何が指定されているかを確かめることです。
- まず会社に聞く。1つだけ聞くなら「JIS規格の指定はありますか」
- 会社が定めているのが規格なら、条件に合う靴を自分で買って履けることがある
- いま履いている支給品のベロの裏を見れば、その現場の規格がわかる
- 指定がなく普通作業なら、JIS規格の普通作業用(S種)かJSAA規格のA種から選ぶ
- ぬれた床なら、JIS規格は F2 の表示、JSAA規格は耐滑の認定があるものを選ぶ
- 重さは先芯の素材と靴底で変わる。樹脂先芯の普通作業用なら両足800g台
- ケガをしたら、安全靴を履いていなくても労災の申請はできる。自分で判断しない

- e-Gov 法令検索 労働安全衛生規則(2026-09-24に確認)
- e-Gov 法令検索 労働安全衛生法(2026-09-24に確認)
- e-Gov 法令検索 労働者災害補償保険法(2026-09-24に確認)
- e-Gov 法令検索 労働基準法(2026-09-24に確認)
- ミドリ安全公式通販 規格から選ぶ(安全靴JIS規格改定のご案内)(2026-09-24に確認)
- ミドリ安全公式通販 安全靴とは(2026-09-24に確認)
- 日本保安用品協会 JSAA規格について(2026-09-24に確認)
- ミズノ公式 オールマイティ HWⅡ 11L(2026-09-24に確認)
- 情報は確認した日のものです。最新の情報は各公式サイトでご確認ください
- 調査方法:クラウドワークスでのアンケート
- 回答数:50人(仕事で安全靴を履いている・履いていた人)
- 調査項目:年代・性別・職種・使う頻度・メーカーと商品名・満足度・満足している点・不満な点・おすすめ度
- 口コミは誤字も含め、原文のまま掲載しています
- 数字は調査したときの回答です。すべての人に同じ結果になることを保証するものではありません



















